夏休みの自由研究向けに“紅(べに)”について楽しく学べる講座「紅ってなあに」を、紅ミュージアムの会場とオンラインで開催しました。普段は見ることができない紅職人の伝統の技も、特別に見ることができた本講座についてレポートします。
まずは、女性がお化粧をしているシーンの浮世絵を見て、その中に描かれている昔ながらの口紅を探してもらいました。
今の口紅とはだいぶ見た目が違うため、「これでいいのかな?」と不安になりながら、ワークシートの絵に丸をつける子も。
答え合わせの後、実際に紅を見てみました。水を含ませた紅筆で玉虫色の紅を溶き、鮮やかな赤色があらわれると、「うわぁ…!」と驚いた声が上がりました。今の口紅と形も色も違いますね。
実際に紅を見た後は、スライドを使って詳しく学んでいきます。化粧品以外にも、布を染める染料としての紅、主に熱を加えない食べ物に使う食紅、浮世絵などの画材用の紅、お寺や神社のお札に字を書くための筆記用の紅と幅広く使われており、伊勢半では、染料以外の紅を今でも作り続けています。
続いては現在も紅花を栽培している、山形県の紅花農家さんのお仕事についてです。 化粧品の紅の原料である山形県産の”最上紅花(もがみべにばな)”を実際に見て、とげが鋭く、花びらを摘むのが大変ということを実感しました。また、この最上紅花を加工して“紅餅(べにもち)”が作られています。
「昔ながらの紅のつくりかた~紅屋(べにや)の仕事」では、紅づくりの再現実験と、紅職人による実演を見学しました。
紅とは、紅花に含まれるわずか1%の赤色色素のこと。紅花の見た目は黄色いお花ですが、この中に赤色色素があるのでしょうか? 紅餅を使った実験で確かめていきます。
紅餅は薄く平べったい形をしており、保存性に優れ、生花の状態よりも赤色色素を多く含んでいます。
この紅餅を水の中で揉みます。すると黄色色素は 水溶性のため、水が黄色く染まります。しかし、赤色色素は水には溶け出してきません。そこで、アルカリ性水溶液の中に先程の紅餅を入れて揉んでみます。・・・はたして成功するのでしょうか? 詳しい実験内容は、こちらのブログからご覧頂けます。
そして待ちに待った紅職人の登場です。伊勢半で紅を作り続けている佐々木さんです。講座の最初に見た化粧用の紅、”小町紅(こまちべに)”を作る最後の仕上げの工程の実演をしてくれました。現在の紅づくりは、当主と職人2人だけが知っていて、普段作っている様子は誰も見ることができないので、私たちスタッフにとっても貴重な瞬間でした。
佐々木さんに紅づくりのやりがいについて質問すると「紅がきれいな玉虫色に仕上がる瞬間は何度見てもいいなと思います」とのこと。紅は刷毛(はけ)で刷く時は赤色で、 乾燥していくと、徐々に玉虫色になります。この玉虫色が美しく仕上げられることが職人の腕の見せどころであり、難しい部分でもあるのです。佐々木さんと一緒に、紅が乾燥して玉虫色があらわれていく様子をじっと見守りました。
オンラインでは実演までをご紹介し、紅ミュージアムの参加者は、「お守り作り・紅点し・紅染めの和菓子を食べる」3種類の体験をしました。
最初の体験「お守り作り」では、佐々木さんから紅を分けてもらい、その紅で字を書きました。
黒い紙に紅で字を書くと、キラキラと玉虫色の輝きが。
古来、赤色には災厄を避ける、魔除けの効力があると信じられてきました。紅も同じ意味を持ちます。親子で願いをしっかりこめて作りました。
次に小町紅を使って、紅を点(さ)す「紅点し」をしました。唇に紅を点してみたり、自分の手の甲で色を確かめたりと 、それぞれの方法で紅の色を楽しみました。
最後は「紅染めの和菓子を食べる」体験です。伊勢半の食紅、”御料紅(ごりょうべに)”を使ってくださっている和菓子屋、”一炉庵(いちろあん)”さんの和菓子を、べにばな茶と一緒にいただきました。紅花には体を温める効果が知られており、食べてもいいこと尽くしなのです。
この色を出すには紅の赤色色素がとても大切だそう。なんともいえない優しいお色です。
味には影響がなく、ほろほろと口の中でほどけていく甘い干菓子でした。
紅づくりに関する特別なお土産をお渡しして、講座は無事に終了しました!
講座が始まる前は、まさに『紅ってなあに?』という気持ちが大きかったかと思いますが、終わった後は、紅について色んな人に話したくなったのではないでしょうか?
自由研究がどのように完成したのかを教えていただけたらとても嬉しいです♪
もっと知りたい子は、何度でも紅ミュージアムに遊びに来てくださいね!
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