紅ブログ

11月29日「塗る、研ぐ―漆箸制作入門」①を開催しました

11月29日「塗る、研ぐ―漆箸制作入門」①を開催しました


手仕事ギャラリー「Authentic Aesthetic-岩田俊彦 作品展-」(2020年11月14日~12月10日)併催講座として、漆芸作家の岩田俊彦氏を講師にお迎えし、講座「塗る、研ぐ―漆箸制作入門」を開催しました。
漆芸の工程というと、漆の「塗り」や「加飾」を思い浮かべる方が多いと思います。ですが、今回の講座のキモは「研ぎ」の体験にあります。
 

  
岩田先生の大型パネル作品は、砥石の目の細かさを変えながら研ぎ、最後には、磨き粉と油を指につけて磨き上げられています。鏡面のようにツヤツヤに仕上げるためには大変な労力が必要。かなりの時間を割き、神経を研ぎ澄ませて行われています。そのような研ぎの工程を体験していただきたく、本講座を企画しました。
  

 
今回制作する箸は、2色の漆を塗り重ね、研ぎ出して模様をつけるというもの。重ねる色の組み合わせや、下地の色漆の凹凸のつけ方によって、研いだ時に個性的な表情が生まれます。
 

 
初日、最初の工程は生地調整。食べ物をつかみやすくするため、箸先を面取りします。無塗装の箸に丁寧に紙やすりをかけます。左右対称に揃えなくてはならず、シンプルですが気の抜けない作業です。
 

 
次に防水のための目止めとして、擦り漆をします。生漆(きうるし)をヘラで伸ばし、木地にしみこませます。全体に漆が行き渡ったら、ウェスでしっかり拭き取ります。
チューブから出したての生漆はカフェオレのような色をしていますが、空気に触れると酸素と結合し、すぐに茶色くなります。漆の樹液は漆の木1本から牛乳瓶1本分しか採れないとのことで、余った分も大切に回収し再利用されます。
 

 
初日メインの工程は、下地の色漆を選び、絞漆(しぼうるし)を作るまで。漆といえば赤や黒のイメージですが、岩田先生は作品に個性的な色漆を用いておられます。講座にも普段からお使いの様々な色漆をご用意いただいたため、皆さん目移りしてなかなか決められません。
 

 
イメージをつかむために作品に用いられた色を実際に見ていただこうと、いったん作品展の会場に移動。岩田先生自ら、展示されている漆芸の道具を一つ一つ丁寧に解説してくださいました。
   

 
教室に戻り、なんとか色を決定。アクリル板の上で色漆に豆乳を少しずつ混ぜ合わせます。タンパク質を加えることで質感が硬くなり、ツノを立てるなどの表情をつけやすくなります。初めは、シャバシャバですが、時間をかけて練っているうちに粘りが出て固くなっていきます。すぐに程良い固さになったものの量が足りないかもと不安になる方、なかなか固まらずにアクリル板全体に広げ、また集めとしている内にいつの間にか大量に作ってしまった方・・それぞれの試行錯誤が続きます。
 

 
いよいよお箸の模様づけです。出来上がりを想像しながら、ヘラや筆で、凸凹に点描のようにつけたり、平らにしたり。分厚く塗りすぎると、うんでしまい、表面だけ乾いて中が固まりにくくなるので、注意が必要です。
きれいに塗れたら、竹串を使ってさらに凹凸をつけたりひっかいたりして、色を重ねた時に面白くなるような仕掛けを作っていきます。
 
初めての作業に戸惑いながらも、皆さん晴れやかな表情で初日の作業を終えました。作業に集中することで雑念が取り払われ、とても良い時間が過ごせたと口々におっしゃったのが印象的でした。コロナ禍で外出を控え緊張する日々が続いているので、なおさらだったかもしれません。
岩田先生に温湿度を確認して、絞漆が中まで乾くように湿り気を与えながら、次回、皆さんが講座にいらっしゃるまで大事に時間を置きます。
 
(つづく)