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作家に学ぶ絵付体験講座「九谷焼の絵具に触れる!花彩色」を開催しました

作家に学ぶ絵付体験講座「九谷焼の絵具に触れる!花彩色」を開催しました


手仕事ギャラリー「5colors-うるわしの九谷焼作家たち-」併催企画の第4弾となる、『作家に学ぶ絵付体験講座「九谷焼の絵具に触れる!花彩色」』を10月7日(土)に九谷焼の絵付師 関あづさ先生、河田里美先生をお招きして開催しました。
 
九谷焼を代表する技法のひとつに「花詰」があります。
咲き誇る四季の花々を敷き詰めるように描き、金彩で縁取った豪華絢爛な九谷焼は、明治期には輸出用としてたくさん生産されていました。
今回は、小皿に描かれた牡丹の下絵に九谷焼の絵具を用いて彩色するといった、この伝統技法の一部を体験していただく講座です。
 

 
関先生、河田先生は、ともに中村陶志人氏の工房に入られて中村氏に師事。
細密にそして丁寧に色を塗り重ねた日常にうるおいを届けてくれる作品を生み出されていらっしゃいます。
 
関先生は、御父上である中村氏より絵付全般について学び、幾種類もの花を緻密に描き、花々が咲き誇り華やかで心が躍るような作品を制作されています。
 

「飾皿 本金花詰」部分 関あづさ氏
 
河田先生は、水彩画のように淡く優しい彩りを繊細に重ねた薄絵の技法でブーケのような花々を描き、心に寄りそうような作品を制作されています。
2017年に日本伝統工芸士に認定、同年より金沢美術工芸大学の花詰講師や石川県立九谷焼技術研修所の薄絵講師も務めておられます。
 

「小壷 花詰薄花色に四十雀」部分 河田里美氏
 
講座が始まると、まず制作工程の紹介がありました。
参加者の皆さんそれぞれの手元には、先生方がご準備くださった牡丹の絵柄のついた小皿があります。
花弁の根元の方は、ピンク色のグラデーションの彩色が施され、花や葉があらかじめ縁取られていました。
この牡丹を、花弁→葉→蕊(しべ)の順に塗っていきます。
 

 
お皿は、九谷焼の洋絵具で絵柄に色を重ねていけるように一度焼成してあり、これから塗る絵具が付きやすくなるよう、目には見えませんが「にかわ」が塗ってあります。
にかわが剥げないように、手袋を使ってくださいとご注意がありました。
 
まずは、牡丹の花弁から色付けを始めます。
薄く塗る九谷焼の洋絵具は、塗ったそばから乾いていくため、塗り方のポイントを関先生がデモンストレーションしてくださいました。
「花びらの外から内へ…、常に花の中心はどこか意識をして、お皿を回しながら塗ってくださいね。
最後に筆の抜ける所が絵具の張力で自然に濃くなります。それが絵に深みを出してくれます」と教えてくださりつつも、筆を持つ手は、サラサラと描き続けて、あっという間に花びらが1枚、また1枚と塗り上げられていきました。
 

 
実演を見せていただいた後は、実際に塗っていきます。
ピンクの洋絵具は、アキフという動物性の定着剤の役目をするものが混ぜられて、描くのに丁度よい硬さに調整してあります。
ガラス板に用意された絵具に手を伸ばし、筆に含ませて、恐る恐る慎重に塗る方、最初から手際よくさっさっさと塗る方、それぞれのスピードで進めていきました。
筆に含ませる絵具の量が少ないと、乾いてスジやにじみ模様が出てきます。
難しいと唸っていると、河田先生が「筆の根元まで全体に絵具を含ませてから、先の方だけ水気を落とすような感じにすると、塗りやすいですよ」と困っているのを見逃さずに教えてくださいました。
 

 
同じガラス板の絵具を使っているのに、色の濃さが違うのも面白い!
 

 
次に葉の色を塗ります。作品制作では、色の濃い部分から描いて徐々に薄い色を重ねてグラデーションを出す作家さんも、色の薄い部分から描いて徐々に色を濃くしてグラデーションを出す作家さんもいらっしゃるそうです。
今回は、塗る体験がたくさんできるようにと考えて、先に濃い色の方を彩色して焼き付けてくださっていました。
参加者の皆さんは、その上から葉っぱの全面を緑色の絵具で薄く覆うように塗っていきます。
葉の描き方にも大事なコツがあり、この順で塗るとうまくいくという手順を教えていただきました。
 

 
筆の先を使ったり、中程の方まで使ったりしながら描くお二人のデモンストレーション。
どれくらい筆に絵具を含ませるのかな、どれくらいの厚みで描いているのかな、間近で作家さんの技を見て体験することができるのも、その場でいろいろな質問に答えていただけるのも作家に学ぶ講座の醍醐味です。
 
蕊(しべ)は、書黒(かきぐろ)という黒い絵具で細く入れていきます。
先生方は「さーっと出来るので」とおっしゃるのに対し、いやいや無理ですってのこもった「えええー」と言う声が聞こえます。
細い線はひときわ難しそうという顔をしていると、先生持参の秘密兵器「細い線の描ける毛先の細い筆」が登場し、一転やる気の空気感になりました。
この蕊の線は、後の工程の黄盛絵具でほとんど隠れてしまう部分ながら、有るのと無いのとでは仕上がりに差があるのだそうです。
お皿に向かい集中して、慎重に筆先を細かく滑らせます。
細く繊細に描けているものの、やや薄い仕上がりで、もう一回蕊の線を重ねた方もいらっしゃいました。
 
最後は、黄色の盛絵具です。先生が蕊の先、花粉の部分を、小さく置くようにちょんちょんと付ける様子を、参加者の皆さんは集まって身を乗り出して見つめます。
 

 
実際に参加者の皆さんが黄盛に取りかかると、先生方は回りながら見てくださいます。
関先生から「もっと、もっと。絵具を盛り上げるようにのせて」と声がかかりました。
 

 
盛絵具は焼くと縮むそうで、塗っている時より少しばかり小さくなってしまうのだそうです。
「私達もやりすぎに思うくらいしていて、それで丁度いいんですよ」と普段の感覚をお話くださり、河田先生からは「水滴を落とすようにぽちゃんぽちゃんとです」とイメージしやすく教えていただきました。
 

 
ここまで出来上がると、皆さん少しほっとした表情になりました。
早めに終わった方から、小皿の白い部分に思い思いのデコレーションをしてみたり、白盛にもチャレンジしてみたりと、時間まで自由にお皿を彩っていました。
 
薄く色を重ねていく洋絵具だからこそ、乾きやすくて一気に描きあげないといけない、一発描きの難しさがあったり、たびたび水を数滴加えて、にぶで摺り混ぜて、筆から降りてきやすい絵具の硬さに調節して描いたり、先生方がちょんちょん、すすすーと筆を進めるのを見ているだけでは分からない難しさが、今回の体験講座にたくさん詰まっていました。
 

 

講座に参加してくださった皆さんの作品(焼成前)
 
今回の講座のために時間を割いてご準備くださった関先生、河田先生、和気あいあいと、楽しい講座をありがとうございました。
 

後日、焼成した作品が届きました!
 
石川県能美市には、九谷焼の作品を観られる施設や、製造工程や歴史に触れられる施設、実際に絵付けなどが体験できる施設がたくさんあります。
「したいこと、能美市だったら叶うかも」がキャッチフレーズの能美市に、ぜひ、足を運んで九谷焼の世界に浸ってみてくださいね。
 
≪関連ウェブサイト≫
Wear KUTANI
石川県能美市webサイト(観光・特産品ページ)
 
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