紅ブログ

通年ワークショップ【紅のミニ実験】をご紹介します

通年ワークショップ【紅のミニ実験】をご紹介します


新人スタッフが通年ワークショップ【紅のミニ実験】をレポートします。
 

 
美しき紅の赤。
この紅の赤色は、紅花の花びらに含まれている赤色色素なのですが、実際の紅花をご覧いただくと、赤ではなく黄色の花びらをしています。
 

 
この黄色い花びらに赤色色素が含まれており、その量はわずか「1%」!
 
通年ワークショップ【紅のミニ実験】では、そのわずか「1%」の赤色色素の抽出を、簡単な実験を通して体験していただく内容になっております。
※本ワークショップでは、小町紅などの紅を作ることは出来ませんのでご了承ください。
 
まずは初めにミニ実験をより楽しんでいただけるよう、常設展示室1で、紅花の生産地や紅の作り方について動画を見ながら簡単にご紹介しました。
 

 
ご紹介した内容をふまえて、実験開始です!
小さなビーカーがずらりと並び、子どもだけでなく、大人も童心に返りワクワクする瞬間です。
 

 
実験の工程は全部で3つ。
 
第1工程では、「99%」ある黄色色素を、取り除いていく実験です。
黄色色素は水溶性のため、水で洗い流すことができるので、水の入ったビーカーに、紅花を乾燥させた“乱花(らんか)”を入れ、乳棒で揉み出します。
 

 

 
ビーカーの水が濃い黄色になってきました!
 

 
和紙を入れて、色をチェックします。
 

 
鮮やかな黄色に「この色も素敵!」という声も上がりました。
実際に紅花の黄色色素は食品にも使われており、そのお話でも盛り上がっていました。
 
第2工程では、赤色色素を取り出す準備をします。赤色色素は水には溶けず、アルカリ性に溶け出す性質があるため、炭酸カリウムで作ったアルカリ水溶液に、先程使用した“乱花”を入れ、さらに乳棒で揉み出します。
 

 

  
本実験では、アルカリ水溶液に炭酸カリウムを使用しましたが、かつてはわらの灰から“灰汁(あく)”を作成し、アルカリ水溶液として使用しました。
 
赤色色素を取り出すには、この第2工程が重要なため、念入りに“乱花”を押しつぶします。
目安は渋い!と感じる紅茶色です。
 
色が濃くなってきたところで、和紙を入れます。
 

  
1回目に比べて黄色味は薄く感じますが、まだ赤色にはなりません。
 

  
最終工程では、ついに赤色色素を取り出す実験です。
赤色色素は酸性水溶液の中では溶けていられなくなって沈殿するため、第2工程で使用したアルカリ水溶液の入ったビーカーに少しずつクエン酸を入れていきます。
 

 
かつては酸性水溶液として、米酢や“烏梅(うばい)”と呼ばれる完熟した梅の実に煤(すす)をまぶし、いぶした後に天日干ししたものを水につけて作った梅酢を使用していました。
こちらの“鳥梅”は現在、奈良県・月ヶ瀬(つきがせ)村の梅古庵さんただ一軒が古来変わらぬ伝統製法で作られています。
 

 
和紙を入れて、色の変化をチェック。 
 

 
まだ黄色色素が強いです…!
 
ここでおさらいとして、黄色色素は水に溶ける性質があるため、和紙を水で洗ってみます。
 

 
ビーカーに和紙を入れて染め、水で洗う作業を何回か繰り返します。
 

 
果たして赤色色素は取り出せるのでしょうか…?!
 
是非、ご参加されてご自身の目でお確かめください。
 
実験で色づけをした和紙はお持ち帰りいただけますので、ご家族やご友人とのお話しに花を咲かせていただけますと嬉しいです。(しおりとしての使用もおすすめです)
 
実験はここまでとなりますが、紅づくりでは、 “ゾク(属布)”と言われる、麻や綿などのセルロース系繊維を編み束ねたものを使用し、さらに赤色色素を取り出します。
 

  
セルロース系繊維には、赤色色素を吸着・脱着する一方、黄色色素は吸着しない性質があるため、伝統的に紅づくりには欠かせないもので、その性質に気付いた先人の知恵には驚かされます。
 

 
かつては、精製水というものもなく、水の状態に左右され、「紅を製するは其の用ゆる水の良否によりて上品下品あり」といわれるほどだったそうです。
 
紅づくりに思いを馳せつつ、最後に実際にご自身の唇に紅を点(さ)す、紅点し(べにさし)体験をしていただき、終了となりました。
 
たった「1%」の赤色色素。
貴重な赤を、是非、見つけにいらしてください。
 
 
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